雨宿り

何かにちなんだりちなまなかったり。

2018-01-01から1年間の記事一覧

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「でも私、本当は紅茶の方が好きなのよ。」 女は言った。 しかし彼女が飲んでいるのは深煎りのブラックコーヒーであった。 「紅茶にはお砂糖を入れるわよ。コーヒーを紅茶にしたってしょうがないじゃない。」 彼女の視線はまっすぐだったが、その視線の先に…

文学

文学について思いを巡らしてみるのは誠に面白いことである。 文学は非常に特殊なものである。 まず指摘できることはその個別性である。数学に代表される様な理念的な学の働きが、同じものの同定であるとすれば、文学は唯一つのものの産出である。 その意味で…

あつはなついね

お題「わたしの暑さ対策」 暑いですね。 僕はエアコンは好まんです。 空気がきれいじゃなくなって、のどが痛くなる、気がするんです。 根性論が好きなので、のべつ暑いところにいれば、そのうち慣れるだろう、こういう考えもあります。 しかし暑いと生産性が…

読書についての覚書

読書をするのは、反対したり反駁するためのものであってはならない。信じたり、早呑み込みするためであってもならない。話や談論の種を見つけるためであってもならない。重さをはかり、考慮するためのものである。(中略)読書は心豊かな人を作る。談話は用…

七夕と関係ない話

スマートフォンが抗うつ剤の代わりになるというのは、確かにその通りだろう。 インターネット上には無限のコンテンツが生み出され続けている。 一つのページに載っている情報をすべて集めても、人一人の情報処理能力を超える。 情報の氾濫の中に敢えて身をゆ…

罪と罰

今一度前提を無にして問いたい。 罪とは何か。罰とは何か。 けだし、罪とは客観的なものではない。ある人が誰かに対して罪の意識を感じても、相手の方は何とも思わない、ということはありうる。 例えば、ある人がうっかり誰かのものを壊してしまった。彼は謝…

権威主義と教育

ルソーは『エミール』において、「私はエミールに、どんな職業よりも前に、人間として生きることを教える」と書いている。 ロダンは「肝心なのは(中略)芸術家である前に人間であることだ」といっている。 我々は人間である。しかし、改めて考えてみれば、…

神経病者と権威主義

権威主義的パーソナリティなる語は主に全体主義の文脈で用いられるものであり、それゆえ現代ではさしたるアクチュアリティを持たないと目されるかもしれない。 しかし権威主義の特徴を少しでも考慮したらばそのような考えは表面的なものに過ぎないと気づかさ…

神経病者と物語志向性3

神経病者とは、社会の不条理を抱え込み、それへの反抗をやめることができない人である。 物語は、人間を形成するもので、人間はめいめい物語に対する志向性を持つ。 ここで、神経病者における不条理は物語であるということができるだろう。 彼はあまりに大き…

神経病者と物語志向性2

人間を形成するものは物語である。 物語とは一回性を持った出来事である。 人は当たり前の出来事は意識しない。水を飲むとか自転車を漕ぐとか日常的な動作をいちいち意識していたらキリがない。 翻って、意外な出来事は意識に上る。人はそれが自分の思いと裏…

神経病者と物語志向性1

人と異なる考えを持ち、確固とした意思を持って信念を貫く人を、中国のある運動家に倣って神経病と呼ぶことにする。 ここでは名の通った文学者、哲学者は軒並み神経病である。 神経病への対抗としてあらわれるものが文学あるいは哲学である。 解消しえない錯…

読書人より。

良い読書は自己の内面の要求による読書である。 しかし内面の要求に適した本がどれであるかを知るにはある程度の読書体験が必要である。 それゆえその要求に従って多くの本を読めばよい。 その際、その読書に少なからぬ苦痛を感じたらその時はやめることも一…

欲しくて諦めた本シリーズ

今日久しぶりに本を買った。つねに机の上に図書館の本が載っているので、汚れのない、自分の本というのは新鮮な感じがした。この本は誰にも返さなくてもいいし、汚しても怒られることはない。絶対汚したくないけど。 しかし犠牲無くして得られる勝利なし、一…

レジで財布を置いただけ

よく行くスーパーで適当なおかずと飲み物などを買い、レジに並ぶ。 何度も来ているのでレジ打ちの人も見慣れている。 いつも通り会計を済ませ、カバンに買ったものを詰めていると、レジ打ちの人が歩いて来て 「お客様財布お忘れです」 ああ、すいませんと受…

いつも昼飯ほぼ0円だからたまには800円くらいいいよね

『よつばと!』を読んでたら焼肉が食べたくなって、お昼にふと、焼肉に行った。 いわゆる「一人焼肉」というやつだ。 「焼肉を食べる」という考えは、それだけで僕に非日常をもたらした。昼飯に梅おにぎりしか食べない僕が、焼肉。なんか4段くらい段階を飛ば…

肉屋とパン屋で救われた話

以前肉屋に行ったとき、定価より低い代金を請求され、一応確認したら「ええわ、負けといたる」と言われたことがある。 そして今日、パン屋に行ったら、「もう店閉めるから好きなの一個持ってって」と言われた。 店を出て徐々に、ある感情が湧いてきた。 救わ…

僕のナイーブな話

僕は、幸福になりたかった でも、幸福が分からなかった だから、どうすればいいのかわからなかった 僕が楽しい時、みんなも楽しそうだった 僕がつまらないとき、みんなもつまらなさそうだった 幸福は伝染する、そう思った 僕が幸福になるためには、みんなが…

無題

星野太さんの書評を見て思い出したのだが、私はジャン=リュック・ナンシーの魔力にやられて、『アドラシオン』を和訳、英訳それぞれ買ったのだった。 "After Fukushima"を苦心しながら読んで、それで満足してしまっていたのだった。 特に意図せずして買った…

返歌

今、ハイデッガーの『言葉についての対話』が手許にある。 ハイデッガーと、ある日本人が存在と言葉についての対話を交わすという内容だ。 この本は、九鬼周造への言及から始まる。九鬼は、「いき」という感情を、ハイデッガーの哲学をヒントにして解釈した…

ドラクエの日

5月27日が「ドラクエの日」に認定されたらしい。 ドラクエを初めにやったのは小学3年の頃だったろうか。 ドラクエ5だったと思う。当初の俺は当然ビアンカを選んだが、イオナズンの魅力に負けて2周したと思う。 それまでやったことがあったポケモンと随分テイ…

メモ

私はこれまで人間について考えてきた。 人間とは何か、どうあるべきか、ということが私の課題の一つである。 まず『孫子』を読み、人間について、かくも普遍的で、鮮やかな記述ができるものかと膝を打った。 それからしばらくは中国古典と西洋哲学を少々嗜ん…

思考ノート2

早くもやめたくなっている節もなくはないが、私は教員を目指している。 それについて詳しいことを述べることはあえてしないが、教育の可能性について考えてみたい。 人間はおそらく、子供のころ育った環境によって、その後の生き方が定まってくるだろう。 親…

思考ノート

哲学について少しだけ、つまらないお話に付き合っていただけたら幸いです。 哲学にはいくつかの問題点があるように思います。 それをお話するにはまず、哲学とは何か、というところから始めなければなりません。 思うに、これに明確な解を与えられた人はいま…

人間と情緒と日本人とくだらなさと個人的趣向に関する身勝手な考察

私はくだらないものが好きである。 いつからか、落語が好きになって、「寿限無」「まんじゅうこわい」「ぞろぞろ」「粗忽長屋」「鼠穴」など、よく覚えてやってみたりしたものである。 「鼠穴」や「芝浜」などは人情噺と呼ばれ、心に訴えかけるような話だが…

情緒

感情は曖昧模糊としている。 感情に限らず、欲望、思考、その他精神的な事柄は言葉を拒む。 説明ができないわけではない。しかし、それでは明らかに不十分だ。 私たちは普段、便利な感情の言葉を使っている。 それらは言葉としての役割を十分に果たしている…

本が好きで読書が苦手なあなたへ

私の本はタイムカプセルです。 本にはいろいろな読み方があります。全集を読むもよし、別々の人やジャンルの本を同時に読むもよし。一字一句慎重に解釈をするもよし、リズミカルに読み進めるもよしです。 私はというと、一冊の本を初めから終わりまで読み切…

人付き合いと食事

新年度が始まると、「親睦を深める」等の名目で、初対面やほぼ初対面に近いような人と出かけたり、食事をしたりする機会が多くなる。 しかし、一度立ち止まって考えてみてほしい。その必要はあるのか、と。それは最適な方法か、と。誰かを傷つけてはいないか…

キスの日

今日はキスの日だそうである。 キスは不思議なものだ。 有体に言ってしまえばただの身体の接触に過ぎないのに、それが特別な意味を持つ。 肩が触れたくらいではどうということはないのに、どうしてだろう。 普段衣服で隠れている部分ならば、不思議なことは…