雨宿り

何かにちなんだりちなまなかったり。

神経病者と物語志向性2

人間を形成するものは物語である。

物語とは一回性を持った出来事である。

人は当たり前の出来事は意識しない。水を飲むとか自転車を漕ぐとか日常的な動作をいちいち意識していたらキリがない。

翻って、意外な出来事は意識に上る。人はそれが自分の思いと裏腹であれば残念だとか悲しいとか言い、目的に合っていれば合理的だと言い、合っていなければ間抜けだとか面白いとか言う。また、未来の出来事や想像の出来事もこれに含まれる。

そうした物語が、事故を規定する材料となる。

同じ景色を見ても、個人によって感じ方が違うように、人の意識に上る物語はそれぞれ異なる。

心配性の人は望まない物語を多く現象し、楽天家の人は好ましい物語を多く現象し、科学者は物質の運動や構成に関する物語を多く現象する。

こうした物語の現象の傾向を物語志向性と呼ぶ。

物語志向性は人によって異なるが、少しずつ変えることができる。

物語の現象そのものが志向性を変えるのである。

多くの嬉しい出来事が、心配性な傾向を緩和することもあるだろうし、ある悲劇的な出来事がそれに類する出来事へ覆いをはらうこともあるだろう。